台湾進出の方法について、どうリサーチすればいいかわからないとお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。 こちらでは3つの台湾進出の方法についてまとめました。 台湾現地での法人設立、支店の解説、代表人事務所の開設について、それぞれ比較しましたので、ぜひご参考にしてください。
台湾にビジネス展開する方法と比較
台湾にビジネス展開をする形態としては、下記の3種類の形態があります。
①現地法人(株式会社または有限会社)の設立
②日本法人の台湾支店を開設
③日本法人の駐在員(代表人)事務所を開設
それぞれの形態の特徴を抑え、まずはどの形態で進出するかを計画する必要があります。
形態別の主な違いは以下となります。
現地法人の設立 | 支店設立 | 駐在員事務所 | |
営業行為の可否 | ○ | ○ | × |
日本本社の法的責任 | なし | あり | あり |
法人決算・税務申告 | 必要 | 必要 | 不要 |
設立維持コスト | 高い | 高い | 低い |
ライセンス取得難易度 | 簡単 | 一部不可 | 難しい |
登録料(登記代) | 1,000台湾$+資本金の1/4000 | 1,000台湾$ | 1,000台湾$ |
法人税 | 17% | 17% ※日本でも課税対象 | ー |
本社への損金算入 | 不可 | 可 | 可 |
会社名(商号)の選択 | 自由に選択可能(簡体字) | 日本本社と同名(簡体字) | 日本本社と同名(簡体字) |
会社監査人の選択 | 任意(ケースにより必要) | 任意(ケースにより必要) | 必要なし |
就労ビザの発行 | ○ | ○ | ○ |
台湾現地に別法人を設立する、日本本社の使者として進出する、 または、駐在員を派遣するといった三種類の方法があります。 実際の人事や事業内容によって方法が変わってくるかと存じますので、確認してみてください。
形態別の主な特徴
それぞれの進出形態について、詳細な特徴を確認しましょう。
①現地法人(株式会社または有限会社)を設立する
法律形態 | 現地法人 |
業務範囲 |
許可された範囲内の業務を行うことが可能。比較的自由。 (※ネガティブリストに記載される業種については禁止または制限あり。) |
株主構成 |
法人の場合は1社以上。個人の場合は2名以上。 ※株主が外国人の場合は非居住者でも可 ※外国人株主が株式を100%保有することが可能 |
最低資本金 |
規定上は撤廃されている。業種によって最低額が設定されているケースがある。 ※資本金額はビザ取得にも関わってくる ⇒ビザ視点、業種視点、運営費用視点で考える必要がある。 |
利益送金 |
日本法人の子会社の場合は、日本法人への利益送金は配当の形式になる。 ※源泉徴収率は20% |
設立日数 | 1.5カ月 |
ビザの取得 | 可 |
※株主構成の部分のみ、株式会社と有限会社で異なるので追記
②日本法人の台湾支店を開設する
法律形態 | 日本法人の支店(※台湾での法人格はなし) |
業務範囲 |
許可された範囲内の業務を行うことが可能。比較的自由。 (※ネガティブリストに記載される業種については禁止または制限あり。) |
経理人(支配人) |
総経理人1名、訴訟・非訴訟代理人1名 ※外国人可、非居住者可、兼任可 |
最低登録運営資金 |
規定上は撤廃されている。業種によってはあり(旅行業など) ※資本金額はビザ取得にも関わってくる。 →ビザ視点、業種視点、運営費用視点で考える必要がある。 |
利益送金 | 台湾の法人税を納めた税引き後純利益は、本店への送金に対する課税はなし。 |
設立日数 | 1.5カ月 |
ビザの取得 | 可 |
③日本法人の代表人事務所を開設する
法律形態 | 日本法人の代表人事務所 |
業務範囲 |
日本本社のための法律行為および連絡事項に限定される。 ※営業行為は不可 |
代表者 | 所長1名、外国人可、非居住者可 |
設立日数 | 1か月 |
ビザの取得 | 可 |
形態別の手続き、所用時間
台湾に法人設立する場合
台湾現地法人の設立は、出資者が日本法人でも日本人個人でも手続きの流れは同じです。
10ステップに分けて説明します。
①申請書類の準備
親会社の基本情報、現地法人を登記するために必要な情報を準備します。 準備する書類は下記の通りです。
項目 | 日本側 | 台湾側 |
現地法人 (株式会社) |
・親会社の登記簿謄本※ ・申請委任状(代理人向け)※ ・台湾の代表者、その他取締役、監査役のパスポートコピー ・取締医薬、監査役就任同意書 |
・台湾のオフィス(登記住所)の賃貸契約書コピー ・会社定款 ・発起人による株主総会議事録(1名法人株主の場合は、取締役会) |
※中日経済文化代表処などでの認証が必要
②社名調査
現地法人の名称を予約するための手続きです。重複など問題があると許可されずやり直しとなります。
一回の庁舎で5つまで申請が可能ですが、予約できる名称は優先順位の高いもの一つだけです。
社名調査時には、現地法人の代表者のパスポートコピーとその印鑑、登記簿謄本のコピーを用意しましょう。
その間に、外国人投資申請のための委任状と登記簿謄本の準備を進めるなどしましょう。
③外国人投資申請(FIA申請)と許可
資本金送金のために、台湾経済部投資審議委員会へ外国人投資申請を行います。
原則として台湾ドル建ての投資額を確定させて申請します。 申請から許可まで2週間程度要します。
④準備口座の開設
台湾の銀行にて、資本金送金のための仮口座として準備処口座を開設します。
台湾の地場銀行の場合、現地法人の董事長(代表者)が銀行支店窓口で直接手続きを行う必要があります。
※日経銀行の台湾支店の場合、その手続きが省略できる場合があり
⑤資本金の払い込み
台湾の銀行で解説した準備処口座まで、先程の③のFIA申請・許可された資本金を払い込みます。
合弁会社の場合または台湾企業からも出資を受ける場合にもこの準備口座に払い込みます。
⑥会計士による資本金の査定
払い込まれた資本金について、台湾の会計士が資本金の査定を行います。
この行程があるため、台湾の設立手続きは会計事務所が負うケースが多くなっています。
⑦会社登記申請
台湾の県市政あるいは経済部商業司へ会社登記を申請します。
定款と会社設立のための書類を提出すれば、通常は1週間程度で許可されます。
ここで、統一編号と呼ばれる8桁の会社番号が発行され、現地法人として承認されたことになります。
法人としての正式な契約の締結や経費精算にあたって、統一編号入りの領収書を入手出来るようになります。
⑧国税局登録
営業開始のための営業項目の登録と税籍番号の申請を行います。
この登録後、現地法人は統一発票を発行して売り上げを計上することが可能となります。
有限会社での現地法人設立の場合は、董事長(代表者)が国税局へ出向き、手続きを行います。
※株式会社の場合は代理人でも可
⑨貿易登録
商品の輸出入を行う国際貿易をする場合は貿易登録をします。 この申請には、現地法人の英語名が必要です。
⑩その他の手続き
その他の手続きについて、3つ挙げました。
●特殊会計年度申請
一般に台湾企業の会計年度は1月から12月までですが、非上場企業の場合は、会計年度を自由に設定することが出来ます。 ただしその場合、定款に会計年度を記載する必要があります。 先程の⑧の国税局終了後に、特殊会計年度の申請をします。
●特別ライセンス項目
特別のライセンスを取得しなければ台湾で営業できないものもあります。 台湾政府の所轄機関への申請が必要で、資格ライセンスを取得している人員を確保する必要があります。 最低資本金が定められている営業項目もあります。 例)土木建設業、不動産仲介業、外国人籍人員の人材紹介業、総合旅行業など
●工場登記
工業区などで製品の製造業を営む場合には、工場登記を行います。 先程の⑦の会社設立登記が完了した後、環境保護区への申請、県市政府への申請、用水・電力・電話の申請の順で工場登記が完了します。
現地法人の設立の流れ-まとめ-
稀に、コストを節約したいがために、現地法人の代表者が、直接台湾の行政機関に申請し、手続きを進めることがありますが、 中国語の問題や複雑な手続きであることから、中々スムーズにすすめられません。
たいていの場合は、会計事務所や弁護士事務所に依頼して設立手続きを進めることになりますが、外国人投資について熟知していない専門家もいるため、 専門分野や実績などをリサーチしてから依頼しましょう。
また、必要な書類をリスト化して、しっかりと用意することが設立スケジュールを短くするポイントの一つです。
台湾に支店設立する場合
支店設立の場合も、法人設立と大まかな流れは同じです。
下記の9つのステップ通りに進めていくことになります。
①申請書類の準備
②社名調査
③登録資本の申請
④準備口座の解説
⑤登録資本の払い込み
⑥会計士による登録資本の査定
⑦外国会社及び支店の登記申請
⑧国税局への登録
⑨貿易登録
詳しくは現地法人設立の流れを参照してください。
⑦が完了すると、台湾現地の法人と同様に8桁の統一編号(会社番号)が取得できるようになります。
⑧については支店長自信が国税局へ出頭する必要があるので、ご注意ください。
支店設立ですと、法人設立時とは申請書類が異なってきます。
申請書類で異なる点は、以下となります。
・本社の定款
・支店を設立することを承認した本社の取締役会議議事録の原本
・法定代理人や支店長向けの授権書
なお、取締役会の議事録は、定例で行っている取締役会議事録から支店設立の議案を抜き出して別途作ることになります。
台湾に代表人事務所を開設する場合
代表人事務所の設立は、現地法人設立や支店開設に比べると非常に簡単です。
下記の3ステップとなります。
①申請書類の準備
下記の申請書類を準備します。
●日本で準備する書類
・代表者のパスポートのコピー
・日本の会社の登記簿謄本
・代表者への授権書
●台湾で準備する書類
・事務所の賃貸契約書
・房屋税単(固定資産税納付書)のコピーなど、
②経済部商業司への届け出
①で用意した書類を経済部商業司に届け出ます。
届け出が終わった後、1週間程度で代表者事務所設立カードが発行されます。
③源泉徴収義務者の登録
国税局向けに源泉徴収義務番号の登録を行います。
通常、3日程度で番号を取得できるようになります。
以上がそれぞれの進出に必要な準備となります。
基本的に、書類の準備をするというのはどの行程でも求められるので、 必要な書類をリストアップして、円滑に申請出来るよう準備することをオススメします。
法人設立する場合の費用(イニシャルコスト、維持コスト)
台湾進出の準備をするにあたって、コスト面の情報も抑えておきたいところです。 台湾で法人設立もしくは支店を設立するにあたって必要なイニシャルコスト(初期コスト)と維持コストは下記のようになります。
台湾で法人設立、支店開設のイニシャルコスト、維持コストの相場は以下の通りです。
①会社設立申請代行費用 | 3万元~6万元(委託業者によって変化) |
②会社名予備調査費用 | 300元 |
③印鑑作成費用 | 500~1,000元 |
④会社登記費用 | 1,000元 |
⑤ビザ取得申請代行費用 | 2万~6万元(委託業者によって変化) |
⑥ビザ取得申請実費 | 6,000~8,000元(ビザ有効期間によって変化) |
①オフィス賃貸料 | 1,200~10,000元/坪 |
②記帳代行費用 | 月額3,000~20,000元(委託業者によって変化) |
③労務代行費用 | 月額1,000~10,000元(委託業者によって変化) |
④会計監査費用 | 70,000元前後(委託業者によって変化) |
※法人設立、支店開設ごとに違いがあるか見てみる
参考記事(内部リンク)
・台湾に法人を作る際の注意点(エグジット方法、資金還元の方法)
・台湾でのオフィス選び